シンナーなど違法薬物の代わりにライター用やカセットコンロ用のガスを吸引する「ガスパン遊び」と呼ばれる非行行為が若者を中心に広がり、問題となっている。依存性が高く経験者は後遺症に悩んでおり、死亡例もあって生命に危険を及ぼす。薬物依存への入り口の一つと考えられているが、医療関係者は「社会の認知度は低い」と警鐘を鳴らしている。
■薬物への入り口
厚労省によると、1990年代に始まり、全国で10代の中高生を中心に広がっているという。背景には▽安価で簡単に手に入る▽覚せい剤やシンナーと違い、規制する法律がない、点がある。
薬物依存の回復施設「びわこダルク」(大津市)では、開設から5年間の入所者63人のうち、ガスパン遊びの経験者は7人と1割以上を占めた。猪瀬健夫施設長(43)は「ガスの使用者は確実に増えており、表に出てくるのは氷山の一角だ」と危機感を示す。
警察庁には補導や死亡件数の統計はほとんどない。だが、1996年には全国で少年16人が死亡した数字が残る。
■密室で引火事故
さらに密閉した部屋でガスを吸って、引火するケースもある。今年6月、仙台市で爆発事故が起き、中学生6人がけがをした。警察庁は「死に至ることもあり、大変危険な行為」としている。
「違法薬物に移行するゲートウェイドラッグの一種だ」。滋賀県立精神医療センター(草津市)の千貫悟医師(42)は指摘する。覚せい剤の中毒などで入院する患者には、過去にガスを吸っていた人が目立つといい、社会の認識不足を嘆く。ガス吸引が体に与える悪影響も研究実績がない。
ガスパン遊びに依存していた男性は言う。「中高生は興味本位で手を出すのかもしれない。でも、代償があまりに重いことを知ってほしい」
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